お金に困らないための〜税金の相続対策
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文書作成日:2024/09/05
他の相続人の判がもらいづらい場合の相続税申告

相続税の申告書を提出する際、他の相続人から判をもらいづらいのですが、どうしたらよいでしょうか?

Q
今月のご相談

 15年前に父が亡くなり、当時は母と私と姉と妹が相続人として、相続税の申告手続きを行いました。母は私と同居していましたが、3年前から有料老人ホームに転居し、2024年1月に亡くなりました。
 母の相続人は私と姉と妹の3人ですが、遺産分割でもめて、各々代理人を立てて協議を行っていますが、現状は未分割のままです。相続税の申告期限が迫ってきているので、とりあえず申告書を提出しようと思うのですが、このような関係となってしまった姉と妹と共同で相続税の申告書を提出するのは難しく、困っています。
 特に、申告書に押印する点です。父の相続のときの押印は、母がいたためスムーズだったのですが、とてもではありませんが、今では押印を依頼できません。
 このような場合、相続税の申告書は提出できるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続税の申告書への押印は、令和3年度税制改正により税務関係書類における押印義務の見直しが行われたことで、不要となりました。また、必ずしも共同で相続税の申告書を提出する必要はなく、単独での提出も問題ありません。

A-2
詳細解説
1.押印義務の見直し

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために推進していたテレワークについて、推進の阻害要因となっていた書面主義・押印原則・対面主義や、デジタル・ガバメントの推進による行政コスト削減の観点を踏まえて、認印による押印が許容されている書類は押印を不要とするなどの税務関係書類における押印義務の見直しが、令和3年度税制改正にて行われました。

 この見直された税務関係書類の1つに、相続税の申告書があります。

 したがって、ご相談のケースにおいては、15年前のお父様の相続税の申告書では確かに相続税の申告書に押印が必要でしたが、今回のお母様の相続税の申告書においては、押印は不要です。

2.複数の相続人等がいる場合の申告書の作成方法

 複数の相続人等がいる場合には、その相続税の申告書は共同で作成して提出することができます。

 ただし、別々に申告書を作成しても問題ありません。

 したがって、ご相談のケースにおいては、ご相談者様単独で相続税の申告書を作成して提出することができます。

3.単独で作成する場合の留意点

 相続人等が複数いる中で単独で相続税の申告書を作成して提出する際には、留意点があります。

 たとえば、相続税の申告書第1表にある「各人の合計」欄は、すべての相続人等に係る合計額を記載しなければならない点です。

 これは、相続税は、すべての相続人等に係る相続財産の価額を基に計算するからです。

 したがって、ご相談のケースにおいては、ご相談者様単独で相続税の申告書を作成する際には、申告に必要な他の相続人の相続財産の状況を知らなければなりません。代理人を立てていらっしゃるようですので、直接連絡することが困難であれば、代理人を通じて確認するとよいでしょう。

 なお、未分割のようですので、もし遺産の中に小規模宅地等の特例を適用できそうな財産がある場合には、申告書の提出の際に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出しておくと、当初の申告では適用できなくとも、その後分割がなされた後の更正の請求または修正申告時に小規模宅地等の特例を適用することが可能となります。

 相続税の申告に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「複数の相続人等がいる場合の申告書の作成方法(押印をせずに相続税の申告書を提出する場合)」、財務省「令和3年度税制改正の解説」

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